ダイエーを支えた10年間
小久保裕紀激動の10年
(日刊スポーツ)

1993年11月21日

小久保2位/心はドーム

根本ダイエー”満足”ドラフト―。1位即戦力・渡辺以外にもダイエーは投手3人、内野手1人を指名。平井正史投手(18宇和島東)こそオリックスに1位指名でさらわれたが、2位アマNO・1の大型内野手・小久保裕紀内野手(22=青山)をはじめ、3位吉本和義投手(22=大阪経法大)4位吉武真太郎(18=国東)5位沢田剛投手(18=函館大有斗)まで、いずれも相思相愛で交渉をスムーズに運ぶ見込み。なお、不作といわれた今年のドラフトだが、九州からは6人の高校生が指名を受けた。

 神宮球場内に設けられた会見場に午後0時10分に姿を見せると、自分の席の真後ろのテレビにクギ付けになった。「ダイエー1位指名・・・渡辺・・・」次に自分の名前が本当に呼ばれるのか、不安と緊張で無言のまま、ただ画面を見つめるだけ。「第2選択希望選手、小久保裕紀・・・」とアナウンスされると、ホッとした表情をみせたものの笑顔がなかった。

 アマ球界NO・1の野手といわれる小久保。ドラフト前、新聞紙上で、”ダイエーが2位指名”の活字を見た時は「ショックはショックでした。でも、日にちがたっていくうちに、気持ちは落ち着いた・・・」2位に指名された気持ちは、の問いに「2位は2位ですから・・・。でもダイエーと交渉できることはとてもうれしい」と、若者らしく切り替えも早かった。

 ―どんな選手に

 「今はFAとかトレードでいい選手が入ってくるので、存在感をアピールしてやりたい。ポジションにはこだわっていないが、最初は内野手でやりたい」

 ―開幕からベンチ入りしたいか

 「それは当然、一日も早くレギュラーをとって活躍したい(プロの世界は)甘いとは考えていない」

 きょう21日に神宮で行われる社会人の住友金属とのアマ王座決定戦に備えこの日、ナインは室内練習場で汗を流していたが、小久保はケガ(8月)のため制服姿。「あすはユニホームを着ます。代打ですが最後ですからね」。

 練習中のところへ岩下スカウトと須田編成管理部主席があいさつに訪れたが、まだ退部をだしていないため話はできずじまい。「あすの試合が終わったら退部届けは出します。交渉は月曜日以降になると思いますが、早く話しを聞きたいですね」。気持ちは固まっているだけに、スンナリいきそうだ。

1993年11月23日


球団史上最高額で、あす仮契約

ビッグルーキーにダイエー球団史上最高評価。ドラフト2位に青学大・小久保裕紀内野手(22=183センチ、81キロ、右投げ右打ち)が22日、ドラフト後初の指名あいさつを受けた。将来ダイエーの幹部候補生という期待から、2位ながら球団史上最高契約金1億5000千万円、年俸1200万円が改めて提示され、24日にも仮契約の運びとなった。3位の大阪経法大・吉本一義投手(21=180センチ、75キロ、左投げ左打ち)は契約金5800万円、年俸700万円で仮契約。4位の国東・吉武真太郎(18=177センチ、75キロ、右投げ右打ち)も指名あいさつを受けた。ドラフトから2日、他球団の動きも活発で入団交渉を受けた指名選手が33人と交渉ラッシュの一日だった。

 球団が小久保にかける期待は大きい。横浜市内の青学大野球部寮を訪れた岩下スカウトは、「3、4年だったらチームのリーダー的存在になることを期待している」と、小久保に1億5000万円の契約金を提示した。

 バルセロナ五輪では大学生からただ一人全日本入りをはたすなど学生野手NO・1の実力に加えて、青学大でキャプテンを務めている統率力も高く評価した。一昨年の若田部と1位の渡辺秀一投手(22=神奈川大)の1億3000万円を抜いて球団史上最高額となった。

 「話を聞いて改めていい球団だと感じている。入団は始めから決めています。新聞で2位を知り、最初はショックだったが、今は全く気にしていません」。即仮契約とはならなかったが、球団の評価に小久保の胸は躍った。「ポジションはどこでもいいし、背番号にもこだわりはない。とにかくレギュラーを取りたい」。控えめなコメントながらも、表情がらはプロでの自信がうかがえた。

 24日には、女手ひとつで育ててくれた母利子さん(47)も同席して、仮契約の運びとなる。「左足に治療に専念して、早く練習に取り組みたい」。8月に痛めた左ケイ骨亀裂骨折もジョギングができるまでに回復。根本監督の大改革のもと、新しい時代を迎えようとしているダイエーにふさわしいルーキーが誕生する。

1993年11月25日

「3塁欲しい!」松永に挑戦状

ダイエーのドラフト2位、小久保裕紀内野手(22=183センチ、81キロ、右投げ右打ち)が24日、川崎市のホテルで仮契約を結んだ。契約金は今ドラフト最高の1億6000万円で、年俸は1200万円。「3塁を練習したいし、始めから全力でやります」と、入団が濃厚な松永浩美内野手(33)に挑戦状をたたきつけるなど、早くもレギュラーどりに意欲を見せた。

 控えめな言葉の裏に、はっきりと小久保の自信が見えた。ドラフトで指名された時から「一日も早くレギュラーを取りたい」としか言わなかったが、入団が決まった会見の席では本音を思いっきり出した。

 内野手、特に三塁手志望の小久保にとって、入団が濃厚な阪神の松永が当面の”ライバル”になる。「学ぶところは学びたい。うまい人が前にいれば自然とうまくなる。いいところは吸収していきたい」と一応?先輩を立てたが、「いつまでもくすぶっていたらいけないので、最初から全力でとばして、ちゅうちょせずにやりたい」と、堂々と挑戦状を突きつけた。

 球団が将来のチームリーダーとして期待していることも、もちろん承知だ。「自分のペースでやれば、周りが評価してくれるものだと思ってますんで・・・」。契約金は前日の提示額から1000万円アップして、ロッテ1位のNTT東北・加藤高康投手(24)と同じ1億6000万だ。球団史上最高はおろか、ドラフト史上最高の契約金で入団する意味も、小久保はよく分かっている。

 プロに入っても、自分のスタイルを崩すつもりはない。「まだまだ自分に欠点はあると思うが、今までのスイングの早さ、打球の速さを落とさないようにしたい」と、自分の打撃にこだわった。本拠地となる福岡ドームについても、「右中間、左中間が広いということで三塁打が狙えるし、自分とっても魅力はあります」と言い切った。

 息子の晴れの日。母利子さん(47)も喜びを分かち合った。「福岡のファンは熱狂的だと聞いているし、やりがいはあります」。小久保の気持ちは、すでに福岡ドームの打席にあった。

 東都の先輩でもある若田部が小久保にエールを送った。「契約金?それは関係ないですけど、期待してますよ」。駒大時代に対戦した若田部は、小久保に1試合2本塁打された苦い体験がある。球団史上最高額の契約金(推定1億3000万)は小久保のあっさりと抜かれてしまったものの、「打者としての第一歩は僕から打ったホームラン。いい打者だし、頑張ってもらいたい」。

◇小久保裕紀(こくぼ・ひろき)1971年(昭和46)10月8日生まれ、22歳。和歌山県出身。183センチ、81キロ、右投げ右打ち。星林高では投手として活躍。青山大に入って野手に転向。92年(平4)には学生としてはただ一人、全日本のメンバーに選抜され、左翼手で7番だった。家族は、母利子さん(47=薬剤師)と弟隆也(20=青学野球部)。